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東京都無電柱化推進条例

ブログ

私が前職時代に携わった無電柱化推進法(平成28年12月9日成立・16日施行。以下「法」)に続き、都道府県初*1の東京都無電柱化推進条例*2(以下「条例」)が平成29年6月7日に成立し、9月1日から施行されることになりました。今回はこの条例の概要をご紹介します。

私はこれまで、木密地域の防災力向上のための無電柱化、地域振興・美観向上の観点からのトランスボックスのラッピング化などを実現するよう、区議会で質問・提案してきましたが、この条例によって都道の無電柱化は一定程度進展すると思います。同時に区道の無電柱化も進展してほしいと期待しますが、区道の無電柱化はまだまだ厳しい状況と言わざるを得ません。

これからも区道の無電柱化を推進して、防災力向上と地域振興に取り組んで参ります!



東京都無電柱化計画

6月2日の都議会において都知事は上記のように答弁しました。私は昨年12月の法概要をご紹介したブログで述べ、また区議会で質問・提案していますが、法に定められている区市町村の計画策定努力義務、今回の条例の区市町村との連携、そして都知事の答弁を踏まえると、目黒区も都と連携して区道の無電柱化を加速するため、目黒区「電線類地中化整備基本方針」を見直すとともに、区道を対象にした東京都と同じような目黒区無電柱化推進条例を定める必要があると考えています。この点については、今後も区議会で具体的に質問・提案して参ります。

また、無電柱化したくても資金面で苦労している区市町村にとっては、都知事答弁の「財政的な支援」は非常に有難いものです。問題はその内容と実現可能性ですが、東京都建設局は、意見募集における「都の考え方」で、「今後策定する条例に基づく無電柱化計画の中で、区市町村に対する支援について位置付けるよう検討してまいります」と表明していますので、大いに注目していきたいと思います。


無電柱化の推進に関する施策

条例に定められたもののうち、主なものをご紹介します。

都は、都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保及び良好な都市景観の創出を図るために、道路について、道路法第37条第1項の規定による道路の占用の禁止又は制限その他無電柱化の推進のために必要な措置を講ずるものとする。


○道路法第37条第1項とは次のような規定です。
道路管理者は、交通が著しくふくそうする道路若しくは幅員が著しく狭い道路について車両の能率的な運行を図るため、又は災害が発生した場合における被害の拡大を防止するために特に必要があると認める場合においては、第三十三条、第三十五条及び前条第二項の規定にかかわらず、区域を指定して道路の占用を禁止し、又は制限することができる。

○この条例により、東京都は都道の道路管理者として都道の占用を禁止・制限することになり、都道における電柱の新設が原則禁止されることになります。

○都道に既にある電柱の占用は禁止されるのでしょうか?この点については、小林かなこ公式HPでご紹介している緊急輸送道路(主に国道)における電柱新設禁止規制と同様であると思います。すなわち、この規定はあくまで都道における電柱の「新設」を禁止するものであって、既に占用許可を得て都道に建っている電柱の占用許可を取り消すものではありません。

○したがって、この規定には都道において電柱がこれ以上増えないようにする効果はありますが、既にある電柱を撤去する効果まではなく、それは次の規定とその実効性によることになります。

○関係事業者は、社会資本整備重点計画法第2条第2項第1号に掲げる事業(道路の維持に関するものを除く。)、都市計画法第4条第7項に規定する市街地開発事業その他これらに類する事業が実施される場合には、これらの事業の状況等を踏まえつつ、電柱又は電線を道路上において新たに設置しないものとする。

○関係事業者(注;道路上の電柱・電線の設置又は管理を行う事業者)は、前項の場合において、現に設置し、又は管理する道路上の電柱又は電線の撤去を当該事業の実施と併せて行うことができるときは、当該電柱又は電線を撤去するものとする。


○社会資本整備重点計画法第2条第2項第1号に掲げる事業とは、道路の新設・改築・維持・修繕に関する事業をいいます。また、都市計画法第4条第7項に規定する市街地開発事業とは、①土地区画整理事業、②新住宅市街地開発事業、③工業団地造成事業、④市街地再開発事業、⑤新都市基盤整備事業、⑥住宅街区整備事業、⑦防災街区整備事業をいいます。

○上記の事業において都道における電柱・電線の新設禁止と、一定の場合における既存の電柱・電線の撤去が行われますので、都道の無電柱化の推進に寄与すると考えられます。

○ただし、「これらの事業等の状況等を踏まえ」がどのように解釈・適用されるか、既存電柱・電線の撤去を「当該事業の実施と併せて行うことができるときは、当該電柱又は電線を撤去する」ということをどのように担保していくのかなど課題があると考えています。

○この点について東京都建設局は、意見募集における「都の考え方」で、「都内で実施される様々な事業の機会を捉え、電柱又は電線の設置の抑制及び撤去することを目的としております。」と意見に対する回答としてはよく分からないことを述べており、今後定められる計画の中でどのように手当されるのか注目していきたいと思います。


都及び関係事業者は、電線を地下に埋設する簡便な方法その他の無電柱化の迅速な推進及び費用の縮減を図るための方策等に関する調査研究、技術開発等の推進及びその成果の普及に必要な措置を講ずるものとする。


○マスコミ報道では「都道の電柱新設禁止」ばかりが注目を集めましたが、この条例では電柱がこれ以上増えることを防げても、電柱を大幅に減らすことは難しいと思われます。電柱を大幅に減らすためには、単に関係事業者に電柱・電線を撤去せよと言っても実効的ではなく、いかに無電柱化のコストを低減するかが重要です。


○無電柱化は1km当たり5.3億円(国交省資料より)かかります。この費用は国・自治体・関係事業者等で負担しますので、無電柱化費用が高ければ、いくら法や条例で定めても、無電柱化費用が潤沢にあれば別ですが、そうでない以上、現実問題として無電柱化の距離は伸びません。

○技術開発は当然のこととして、昼間に工事をして夜に埋戻し朝にまた掘り返すコストがかかる工事をしている現状を見直す規制緩和をするなど、総合的な「無電柱化の迅速な推進・費用の縮減を図るための方策」が実は大変重要で有効なのです。


都民の声

東京都は条例制定にあたり意見募集をして都の考え方を公表していますので、その一部をご紹介します。

意見 都の考え方

○消防署出入口、広域避難場所出入口など発災時の対応に直結する場所を優先するために、都市防災機能強化を優先する考えを明確に条例案に記す。

○無電柱化は都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保及び良好な都市景観の創出を目的としており、都市防災機能の強化は優先的に取り組んでまいります。

○「これらの事業の状況」、「当該事業の実施に併せて行うことができるとき」とは何か。条例は例外や抜け道が生じないように作るべき。

○「道路上の既設電柱又は電線の撤去を当該事業と併せて実施できるときは、当該電柱又は電線を撤去する」は、後ろ向きな印象を受ける。やらなくても何とでも逃げられるような書き方は絶対にしないでいただきたい。「速やかに」「全て」の都道の電線及び電柱を撤去すると記載してほしい。

○都内で実施される様々な事業の機会を捉え、電柱又は電線の設置の抑制及び撤去することを目的としております。

○都の責務に「工法の説明を都民に行う」を追記するとともに、無電柱化計画は「住民に説明を行う」を追記すべき。

○また、都民に対し、都の施策への協力を求めるのであれば、情報公開に努めるべき。

○今後策定する条例に基づく無電柱化計画は、策定及び変更時に都民への意見募集を行うとともに、計画を公表してまいります。

○また、事業実施に当たっては、都民の皆様のご理解とご協力を得られますよう努めてまいります。

○条例では電線のみを対象としているが、実際の交差点には信号機の架空線も残っている。この点も触れるべき。

○本条例では対象外でありますが、条例に基づく無電柱化計画の中でその取扱いについて定めるよう検討してまいります。

○無電柱化は地下の浅い層に埋設されることから、日常的な道路工事などによるケーブル切断事故などのリスクや電気・通信の重要ケーブルの切断を狙ったテロの危険性も高まるため、「無電柱化後の地下埋設物設備の安全」についての項目を追加する必要がある。

○調査研究、技術開発等の中で、安全の視点についても検討を進めてまいります。

以上

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